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セルビア剣道発展のバトンをつなぐ──JICA海外協力隊・三好俊成さん

インタビュー実施時期:2025年5月

世界に広がる剣道。その普及には、各地の文化的背景を理解しながら、地道に活動を続ける日本人の存在が欠かせません(もちろん、現地の方々の尽力も!)。

今回お話をうかがったのは、仕事を休職し、2年間の任期でセルビアに渡ったJICA海外協力隊員・三好俊成さん。小・中・高・大と剣道に打ち込み、就職先も強豪実業団の企業。まさに剣道とともに歩んできた人生でした。

そんな三好さんの心に残っていたのが、大学時代に訪れたフィリピンで感じた「海外への憧れ」。当時200点台だったTOEICスコアを800点台にまで引き上げ、青年海外協力隊への応募を決意します。

これまでどのような道のりを歩んできたのか。そして今、セルビアで何をおもい、どんな未来を描いているのか、お話をうかがいました。

成功も挫折も、すべてを糧に

ーーこれまでの剣道人生について教えてください。

5歳の頃に剣道を始めて24年が経ちました。きっかけはアニメで、ここまで続くとは思っていなかったです。今では剣道のない自分の人生は、考えられないほどになっています。

これまでの剣道人生を振り返ると、良いことも挫折経験も、たくさんあります。

わたしが最初に所属したのは、全国的にとても有名で、全国優勝経験がある強豪クラブでした。稽古も厳しく、地方大会では優勝しなければ怒られるのはもちろんのこと、勝ち方まで問われるほどでした。

そんな中で稽古に励み、仲間に恵まれた結果、道場連盟の全国大会で団体優勝をすることができました。この時が、自分のピークの戦績です(笑)

中学、高校、大学、社会人になっても剣道を続けてきましたが、全国で勝つことが次第に出来なくなりました。

「なんで勝てないんだろう?」と思い悩みながら、試合に臨み、また勝てない。挫折を感じる時期が続き、当時は苦しく感じていました。

私が剣道をしてきて良かったなと思う点は、この成功と失敗体験です。成功というゴールに向かう途中に、失敗という過程があるということを学ぶことができました。これは、剣道だけではなく私生活や仕事の面でも活きています。

例えば、試合で優勝するというゴールを決めたとき、自身の競技力を上げるために新しい技に挑戦するが、相手に打たれてしまう。これは私にとっては、一種の成功のようなものだと思っています(笑)

現在は、ヨーロッパの東欧に位置するセルビアという国で、剣道指導をしています。

日本のように大会で結果を残せば良い大学にいける、良い会社に就職できるといった環境はありません。剣道具、竹刀は簡単に手に入りません。

このような環境でも剣道を好きになってもらう、剣道をして学ぶものがあると感じてもらえるように指導していきたいと思っています。

卒業旅行をきっかけに海外志向に
就職後も勉強を継続

ーー海外に興味を持ったきっかけを教えてください。

海外に興味をもったきっかけは、大学の卒業旅行で訪れたフィリピンです。

日本社会に感じる閉塞感とは無縁のフィリピンの雰囲気を好きになり、将来は海外で働きたいなと感じるようになりました。

しかし、語学の面で不安を感じていたため、海外に行きたい気持ちを持ちながらも、日本で働き、実業団で剣道を続けました。

私が入社した年の冬にコロナウイルスが蔓延しました。今まで剣道に使っていた時間が空いたのでその時間を語学勉強に充てました。

ある程度、基本を学び直して、あとは現地で生きた英語を学びたいなと思い海外に挑戦することにしました。

ーーそこからJICA海外協力隊に応募した経緯を教えてください。

いつかは海外に行きたいし、行けるなら若いうちに行きたいなと思っていたので、海外に展開している会社を軸に転職活動に取り組みました。

その中で、JICA海外協力隊という選択肢を見つけ、職種も剣道であり、英語で活動するという条件だったため自分の強みが活かせると思い、応募しました。

ーー応募してから海外渡航までにどんなことをしたか教えてください。

セルビアでの剣道には条件がいくつかあり、英語のレベルがTOEICで550点以上、剣道指導歴7年以上、5段以上だったと思います。

社会人時代に準備する時間があったため、受けるための条件はクリアしていました。

JICA海外協力隊では、1次選考が書類審査、2次選考が2回の面接、2次選考を合格したものが訓練学校に入所し約2ヶ月間の訓練をおこないます。

その訓練に合格して、協力隊員として正式に海外に派遣されるという流れでした。

私の合格までの流れは、2022年10月に応募、2023年1月に1次選考通過、2月に2次選考、4月に合格をいただきました。

訓練は2024年の1月から3月まであり、5月に派遣されました。

訓練内容は、主に語学勉強ですが海外で生活する上での注意点や派遣内容によっての研修などがありました。

セルビア渡航後、稽古だけではなく講習なども実施

渡航後に実感した治安と語学レベルの高さ

ーー実際に渡航してみてどうでしょうか?

実際に渡航してみて驚いたのは、すごく治安がいいことです。

現在、セルビアでは政府に対してのデモが活発におこなわれていますが、暴動化することもなくルールにのっとったデモです。

「海外生活は軽犯罪が多いのではないか?」と思われる方もいるかもしれません。私自身も、スリなどを覚悟してきました。でも実際は、ほとんどありません。日本の方が多いのではないか?と思うほどです。

もう一つ驚いたのは、語学力の高さです。ヨーロッパという地理的な理由もあるかもしれませんが、基本的に若い子は母国語であるセルビア語と英語を話せます。人によっては、ドイツ語、フランス語、ロシア語等、第二、第三言語までペラペラです。

要因はいくつもあると思いますが、一つに外貨獲得の側面が大きいのではないかなと思います。

剣道の面では、技術面が高いことはもちろんのこと、剣道の文化的理解も高いなと感じます。わたしはセルビア剣道隊員としては、4代目であり過去に3人の先生が活動されました。先生方の教えが根付いているため、私の活動はやり易いと感じます。

バルカン・東ヨーロッパと共に成長したい

ーー今後、セルビアで取り組みたいことを教えてください。

今後取り組んでいきたいことは、競技力の向上と競技人口の増加です。

この二つは相関関係になっていると思います。現在セルビア国内には約200名の剣道家が稽古に励んでいます。

継続的に強いチームを作るためには、各年代の競技者を増やすことはマストでおこなわないといけません。若い新規参入者の獲得のために、日本文化・剣道イベントの企画をおこなっていきたいです。

またセルビアだけに目を向けず、バルカン・東ヨーロッパと一緒に強くなっていければいいなと思います。

どうしても国内だけでは規模が小さいため、周辺諸国でセミナー・大会を企画し競争力を高めていきたいです。私の任期は2年間だけですが、2年で終わりではなくその後もタッグを組んで活動していければ嬉しいです。

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