多くの剣道道場や剣友会が体験会を通して、新規会員を獲得しているかと思いますが、あくまで体験会に足を運ぶ人たちは「興味を持っている人」と言えます。偶然、剣道に出会うような機会を創出することで、さらにその手前の層にアプローチできるのではないでしょうか。
2026年8月22日(土)イオンモールつくばのセンターコートにて、小・中学生向けの剣道イベントが開催されました。主催は筑波大学体育スポーツ局で、剣道部監督の鍋山隆弘さんが中心となって企画を実施しました。
本記事では、当日の流れや詳細をレポートいたします。今後、同様のイベントの開催を検討している方々の参考になれば幸いです。
より多くの人に、剣道に触れてほしい
なぜイオンで剣道のイベントを実施したのか?その背景には、「もっとたくさんの人に剣道を知ってもらいたい」という、講師の鍋山さんの思いがありました。
鍋山さん
「知人と剣道普及について話していた際、『そもそも剣道を知らない人が多すぎるのでは?』という話になりました。他のスポーツ競技と比較して地上波に取り上げられる機会も少なく、今後は部活動もなくなっていくので、より一層、子どもたちが自然に剣道に触れる機会が減ってしまいます。
人の集まるショッピングモールで剣道のイベントを開催すれば、今まで剣道に触れる機会のなかった人たちにも、気軽に知ってもらえるのではと考えたんです。屋内であれば天候に左右されないという点も大きかったです」

経験者講習会から、体験会へ。優れた導線設計
本イベントのユニークな点は、経験者向けの講習会と、初心者向けの体験会があった点です。
イベント会場はエスカレーターの真横にあり、道行く人たちが稽古の様子を目にしていました。経験者の子たちが大きな声を出して稽古をすることでインパクトを生み、足を止めてくださる方も多くいらっしゃった印象です。

ショッピングモールで剣道なんて、うるさくないだろうか?と最初は思いましたが、天井が吹き抜けになっている場所だったので、音がこもらず、そこまで気になりませんでした。人が足を止めるにはちょうど良い音量になっていたと思います。
また、空手マットを敷いたことで怪我の心配もなく、さらに色分けされているために並ぶ場所を識別しやすく、動きもスムーズだったようです。

エスカレーター前で一斉に素振りをした際は、特に人目を引いている印象でした。エスカレーターを登りながら、稽古に目を向ける人がほとんどです。

興味を持った方々が、その日のうちに剣道に触れられるように、筑波大学剣道部の学生さんたちが各階に数名立ち、チラシを配っていた点も印象的でした。

大学生のお兄さん・お姉さんが「気軽にきてね」と優しく話しかけてくれたので、「やってみようかな」という気持ちになる小さい子どもも多かったのではないでしょうか。


当日は、剣道具を身につけて元立ちをする学生さんと、子どもたちがスムーズに動けるようにサポートに回っている学生さんがいました。声かけの仕方が優しく、見ていて安心感があります。大学の研究室で、コーチングを学んでいる学生さんが中心となってお手伝いに来ていたそうです。

普段試合に出ている選手も多くお手伝いに来ていました。経験者の子たちにとってはもちろん素晴らしい機会になると思うのですが、剣道を知らない方々が初めて目にするのがトップレベルの大学生剣士、というのも素敵だなと思いました。
経験者向けの講習会では、講師の鍋山さん、松﨑さんが礼法から教えていて、超一流剣士の立ち居振る舞いを間近でみられた点も魅力です。


経験者の子たちは剣道具を着用するため、防具袋が人数分発生します。通路や場所の妨げにならないよう、台車が用意されていて、控え室に速やかに運ばれ、イベント終了時にすぐ手渡されており、とてもスムーズなオペレーションでした。

なお、正面にはスクリーンが置いてあり、試合動画や映像が流れていました。学生さんが持参したパソコンと接続し、遠隔で操作していたようです。


稽古が終わった後に、少年たちが講師の先生だけではなく、大学生にもサインを求めたり、交流していた点が微笑ましかったです。茨城県内だけではなく、栃木や神奈川からも今回は参加があったそうですが、このように県も世代も超えた交流が生まれた点も素晴らしかったと感じます。
85名の未経験者が参加。茨城県内の道場への誘導も
当日の飛び入り参加も含め、この日は85名の未経験者の方が剣道体験をしたそうです。



大学生だけではなく、経験者パート担当の先生たちも剣道体験のお手伝いをして、松﨑さんはスタッフTシャツを着てチラシ配りまでされていました。
本体験会で剣道に興味を持たれた方々が、剣道を始められるようにあらかじめGoogleマップで道場リストを作り、当日にチラシとして配布されていました。

「経験者パート」で参加された道場の方々に、道場マップへの追加の許可をとって作成したそうです。結果として、経験者パートの参加者も巻き込んで、競技人口を増やす取り組みになっている点が本当に素晴らしいと感じました。
産学連携で、剣道文化を未来へつなぐ

本イベントを無料で実施するにあたり、空手マットの購入など経費も必要で、それらを「協賛」としてカバーしてくださったのがJX金属株式会社さんでした。
筑波大学体育スポーツ局 白井さん
「JX金属さんも小中高校生を対象とした剣道大会を開催されており、また実業団として、仕事と競技を両立しながら、企業スポーツとしての強化や社会貢献に取り組まれています。これらの点では、学業と競技を両立し、スポーツを通じて社会とつながる大学スポーツと共通している部分も多いと感じています。
そうした共通点を持つ企業と大学が、今回一緒にこのようなイベントを実現できたことは、本当に大きな一歩なのではないかと思っています。
剣道はオリンピック種目ではありませんが、技術や訓練だけではなく、その背景にある『道』の教えや精神性に共感する人も多く、ヨーロッパをはじめ海外でも広く愛されています。日本で生まれ、世界へと広がっている剣道だからこそ、私たち自身がその価値を認識し、大事にしていきたいと改めて思いました」
また、本イベントは全日本剣道連盟 剣道未来プロジェクト、茨城県剣道連盟、茨城県剣道道場連盟の後援も受けていて、未来プロジェクトのホームページやSNSでも紹介されています。
剣道未来プロジェクトでは、今回のように、地域団体・学校・企業などとの連携や後援、応援にも取り組んでいます。支援のご希望の方は、ぜひホームページからご連絡してみてはいかがでしょう。
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